環境ビジネスの価値創出構造

まとめ

  • 産廃処理業者を選ぶポイントは,地元との関係性。
  • 受益受苦の非対称性を理解する。
  • 一般廃棄物(ごみ)処理や保育園の問題も,受益と受苦の非対称性で説明できる。

参考文献
籠義樹『嫌悪施設の立地問題―環境リスクと公正性』(麗澤大学経済学会叢書),麗澤大学出版会,2009年。

産業廃棄物処理の構造が,前のスライドで理解できたでしょう。
産廃処理施設および産廃処理業者の機能は,もちろん産廃を処理することですが,それにも増して,施設が立地する地元の環境を守ることです。
産廃処理業者の機能も,まずは施設の地元の環境をまもることだと言えます。
それらのことをまとめると,産廃処理は,3人の生産者(プロデューサー)の協力で実行されるということです。
つまり,(1)排出事業者;(2)処理業者;(3)地元コミュニティです。

地元が大切なのだけれど,そのことが見えていない事業者(産業廃棄物を発生する者)が多くて困ります。
また,処理業者の中にも,そのことを理解していない者があります。
そして,そういう人たちが問題を起こしています。

前ページの図では,「受苦」という変数を導入しました。
受益に対する反対語です。
本当は,受益者が受苦者であると話が単純になるのですが,利益を受ける人と迷惑を蒙る人が別々になってしまうことが多いのです。
これを受益と受苦の非対称性と言います。
いわゆる迷惑施設の問題には,すべて受益と受苦の非対称性が絡んでいます。
廃棄物処理施設ばかりでなく,軍事施設;高速道路;病院や学校までも,人によっては迷惑施設と捉え,その立地を巡って紛争が起きています。

また,近ごろは保育園の立地に関して,地元に反対運動が起きている例が報じられています。
それについては,地域社会のエゴだと捉える風潮がありますが,受益と受苦の非対称性を適用して考えると,解決の糸口が見えるはずです。
次回は,保育園問題を論じてみましょう。

SDL (Service-Dominant Logic) のまとめ

  • SDLは,形のないサービス財の取引をよく説明する。
  • SDLは,形ある商品(物財)の取引にも適用できる。
  • SDLは,マイナス価値の廃棄物の処理の説明にぴったりフィットする。

SDLをまとめます。
SDLは,サービス=ドミナント・ロジックと言うように,サービス財(形のない商品)の取引を理解したり説明したりするのに有効な道具です。
床屋に行って髪を整えて貰うとか,故障した自動車を整備工場に持ち込んで修理して貰うとか,特にそういう取引を分析するのに適しています。

しかし,サービス=ドミナント・ロジックの凄いところは,物財の取引についても適用できてしまうことです。
つまり,統一理論を構築できる。
そのことについては,また別の機会に詳しく論じます。

そして,
サービス=ドミナント・ロジックは,廃棄物処理の説明にもぴったりとフィットすることは,今回の解説の通りです。
廃棄物処理でも,特に産業廃棄物処理は,民間の営利事業として行われています。
つまり,サービス財として取引されています。
けれども,先に挙げた,床屋での散髪とか自動車の修理とかとは,決定的に違うことがあります。
それは,人間のアタマも自動車も価値がありますが,廃棄物はマイナスの価値があることです。
廃棄物がマイナス価値であることは,これもいずれの機会に解説しますが,マイナス価値の廃棄物に関するサービスの説明にもフィットするのがサービス=ドミナント・ロジックの優れた点です。
さらに,受益と受苦の概念までも組み込めてしまうのも,サービス=ドミナント・ロジックの柔軟性というか,万能性の現れです。

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