SDL (Service-Dominant Logic)で考える
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交換の概念に代わる,サービスドミナントロジックという概念があります。
取引とは,売り手と買い手が協力して「価値」を作り出すものだという,経済分析の枠組みです。
新しい概念で,2003年に発表されました。
物財の取引もサービス財の取引も,一緒にして考えるので,サービスドミナントと名付けられています。
取引とは,売り手と買い手の間でのモノの所有権の移転ではなく,売り手と買い手が資源を出し合って協力して価値を創り出すと考えます。
物財つまりモノを取引するにしても,モノの所有権でなく,モノを所有することの効用に着目します。
そうすることで,物財の取引もサービス財の取引も同じように考えることができます。
酒場のオヤジと,呑み助が居ます。
これから,酒を呑み始めます。
カウンターを挟んで,座っているだけでは酒呑みにはなりません。
それぞれが何らかの資源(リソース)を出し合います。
酒場のオヤジは,「酒・肴・場所・おもてなし」を提供します。
それに対して,呑み助が提供するリソースは,ズバリお勘定です。
これらリソースが揃ったところで,酒を呑む目的を考えます。
酒を呑む目的は,呑み助の疲れた肉体と精神,これを何とかしたいということなのです。
一日働いて,カラダもココロもくたくたで,これを癒したくて,酒場の暖簾をくぐるのですね。
これらリソースが揃って,酒を呑むという行為が成立します。
そしてここから,
「疲労と空腹からの回復」。
「精神的癒し」。
そして「明日への活力」という価値が創出されました。
呑み助が,彼の疲れた肉体と精神を引きずりながら,酒場の暖簾をくぐった甲斐があったというわけです。
そして,「利潤」という価値も創出されました。
それら価値を酒場の親爺と呑み助がどのように分配するのでしょうか。
上の3つは,呑み助の取り分ですね。
そして,最後の1つは酒場の親爺の取り分です。
「売手と買い手が資源を出し合って,共同で価値を創出する」とは,こういうことなのです。
SDLは,なにも酒を呑むことを説明するばかりではありません。
学校における教育だとか,病院や診療所における医療だって,SDLで説明できます。
役所が提供する公共サービスもSDLで説明可能です。
こうしてみると,酒を呑むという行為は,決して不要不急のものではないし,まして酒場という商売も卑しいものではないのです。