【離乳栄養法-6-②ビタミンD欠乏症】令和の時代~科学の進歩は赤ちゃんの食が関わる健康問題の解決に貢献しているか

令和時代~(2019~)

乳児において、ビタミンD欠乏によるくる病がまれでないことが、海外でも日本でも報告されている1)。これは紫外線の問題がクローズアップされたことによる日照機会の減少、ビタミンDを多く含む魚類の摂取量の減少が原因とされている。また過度のUVカットやビーガン食等の母親の偏った食生活による母乳栄養中のビタミンDの減少も原因のひとつといわれている。

離乳期においては、日照機会に乏しいことや魚類(しらす干し、鮭、さんま等)の摂取量不足、離乳開始のおくれや遅延、アレルギー性疾患治療による過度の食事制限が危険因子としてあげられる。

ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収率が低下すると同時に骨にカルシウムが吸着しにくくなる。このため、骨が柔らかくなりO脚や()(がい)(ろう)(頭蓋骨の石灰化不良)の症状がみられるようになる。これがくる病である。

このほかに、免疫力が低下し、インフルエンザなどの感染症にかかりやすくなり、感染後には喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患になりやすいことが報告されている2)

ビタミンDは、紫外線(日光)によって皮膚で作られるが、乳児の日照機会が不足した原因として紫外線暴露による皮膚がん発症リスクの危険性が過度に情報提供されたために、1998年から母子健康手帳から「日光浴」を勧める記述を削除した影響が大きいとされる。

さらに母乳育児の場合には、母親の過度の紫外線防止行動や、魚類の摂取量不足、あるいは極端な偏食や菜食主義により母乳中のビタミンDが不足するので注意が必要である。

ビタミンDは生後すぐから不足が問題となる栄養素であることから、母乳によるビタミンD不足にならないよう注意する。離乳期にビタミンD不足を予防するには、ビタミンDを多く含む魚類をはじめ鶏卵、レバー、キノコ類を食事に積極的に取り入れること3)(図1)、

さらに適度な日照機会は地域や季節により違うので、下記を参照に日々の生活に取り入れていくことが望ましい。

【引用・参照文献】

1)厚生労働省、2020,「日本人の食事摂取基準2020版」、183-184。

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

(2024年6月2日アクセス)

2)時田万英・鈴木光幸・中野聡・平井沙衣子、2018、「離乳遅延と日光不足により発症したビタミンD欠乏性くる病の1幼児例―。本邦報告例(166例)の検討」、『日本小児栄養消化器肝臓学会雑誌』、Vol.32 No.1 1-7。

3)三宅のどか・宮林広樹・目地嵩也・山村菜絵子・佐藤大記、2016、「反復する痙攣を契機に診断に至ったビタミンD欠乏性くる病の一例」、『仙台医療センター医学雑誌』、 VOL.6.Dec.69-73。

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