【離乳栄養法-1】~子どもの食と栄養ー離乳

「離乳食作りって大変~歯(大臼歯)が生える前に赤ちゃんに食べ物を与えるのは人間だけ⁈」

離乳食作りは大変!と訴えられる養育者の方は多いですね。

公的な機関で「はじめての離乳食教室」の講師を月1回ほど担当しているのですが、離乳食に関して「作るのが負担、大変そう」「食べさせるのが負担、大変そう」など負担感を訴える方がたくさんいらっしゃいます。

それもそのはず霊長類*の中で歯(大臼歯)が生える前に赤ちゃんに食べ物を与えるのは人間だけ。

このため歯が生えていない赤ちゃんが食べられるよう調理するのは工夫が求められます。

そのうえ自分の手指を使ってまだ食べられない赤ちゃんにつきあって食べさせるのも大変。

さらに噛む力だんだんが育ってくるので、発達に合わせた調理形態に変化が求められて…。

でもなぜ、人間はそんなに早くから工夫したものを赤ちゃんに食べさせないといけないの?と疑問を持ちませんか?

ほかの動物のように 歯が生えてから与えた方が楽なのに。

一説によると、大昔、私たちの祖先が熱帯雨林からサバンナに移り、そのきびしい環境に適応するには、乳離れが早く出産期間が短いという特徴を持った個体が、サバンナの環境に適していたと。

つまり人類が生き残りを可能にするには、

乳離れを早くする⇒授乳期間が短くなる⇒妊娠しやすい期間が増える⇒子だくさん⇒子孫を多く残せる⇒人類繁栄。

このため短い授乳期間と早い離乳をつかさどる遺伝子が人類祖先の集団に広まったと考えられています。

確かに昔の書物にも、例えば正和4年(1315年)の「万安方」梶原性全(編集)には「粥食の補食生後3日から、10日でなつめ大、50日で鉄砲玉大、100日以降は任意」、元禄1年(1688年)の「小児養生録」千村真之(著)には「生後6か月には粥を柔らかく煮てすりつぶして与える」と記されおり昔から離乳は歯が生えそろう前、早くから与えるようにいわれていたようです。

私たち祖先は、人類の生き残りをかけて、離乳食を早くから丁寧に作って与えていたようですね。

霊長類*:哺乳(ほにゅう)動物中で脳が著しく発達した(ヒトを含む)一類

《参考文献》

山極寿一、2016、「共感社会と家族の過去、現在、未来」、『人類の社会性の進化(Evolution of the Human Sociality)』、(下)、本郷峻編(アイカードブック) 岩波書店、(Kindle No.656-657)。

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